コロナ禍の中、今年も企業の内定式が
オンラインなどで行われたようですね。
新年度が始まり、
新入社員が入ってきたりすると、
よく研修などで行われるのが、
「タイプ分け」。
あなたは〇〇タイプ、
あなたは××タイプなどと
診断するツールですね。
受講した本人が自分の強みを知り、
それをさらに伸ばす目的で行われる
タイプ分け診断ならいいのです。
問題となるのは上司が
そのタイプ分けを信じ切って、
部下の可能性を否定してしまったり、
部下の事を理解する努力を
それ以上しなくなった場合です。
拙著「ケンタッキー流部下の動かし方」でも、
冒頭にリーダーのタイプ分けを入れています。
当然、目的は自分の棚卸しをして、
そしてさらに、
自分の能力を伸ばしてもらうためです。
ところがタイプ分けを使うことで、
部下を「そういう人だ」と決めつけて、
それ以上部下の事を
理解しようとしなかったり、
逆にダメ出しの材料にしようとしたりする
上司は少なくありません。
例えば拙著の中で、
Aタイプ=「自分のやり方にこだわりすぎる
リーダー」と診断されたとします。
この診断をされたことを受けて、
「あの人は、自分のやり方に
こだわりすぎる人だから」と決めつけて、
様々な話を進めてしまう人。
これを上司がやってしまうと、
言われた部下も
「自分はこういうタイプだから」と思って、
できないことを
自分のタイプのせいにしたり
するようになります。
大まかなタイプに分けることはあっても、
それでその人を決めつけるのは、
「あなたのことをそれ以上理解しません」と、
宣言しているようなものです。
人の個性や能力は、
簡単なタイプ分けで
すべて決めつけられるようなものでは
ありません。
その人が意識したり、
見えたりしている能力(顕在意識)は、
その人の能力の5%~10%と言われています。
そして、その人が意識していない能力
(潜在意識)は90~95%もあるのです。
上司の仕事は、
部下の生産性を上げて
成果を出させるよう導くことです。
ですから、ふだんは見えていない90~95%を
いかに引き出してあげられるかで、
上司の部下育成力は決まります。
この潜在意識を引き出すのは、
タイプ分けではなく、
観察とフィードバックと対話です。
その人の強みや価値観、信念を、
引き出すきっかけとして、
タイプ分けを使うのはいいですが、
その人を決め付けるツールとして
タイプ分けを使ってしまうと、
部下との信頼関係も
できるわけがありませんね。
世の中には、
タイプ分けのような便利ツールは
他にもたくさんあります。
大切なことは、
「何のためにそのツールを使うのか?」
「それを使って、
どのような成果を導き出すのか?」
といった明確な目的です。
忙しいビジネスマンにとっては、
耳の痛い話かもしれませんが、
成果を出す早道は、
目的を持って着実に行動することです。
便利なツールを使うときは、
注意したいものですね。