企業の業績を上げるには、強い組織を作り、
市場への活動エネルギーを高めることが
肝要です。

米国の経営学者チェスター・バーナードは、
強い組織の3要素として
1.共通の目的を持っていること
2.円滑なコミュニケーションが取れること
3.お互いに協力する意思を持っていること
と言っています。

目的に向かうプロセスで
お互いが理解し合うことで、
この3要素は実現できます。

ある時、
中小企業の経営者や幹部向けの講座の中で、
ひとりの参加者から
次のような悩みを打ち明けられました。

チームを組んで、
企業や住宅のメンテナンスを
行われている会社の幹部の方です。

ある日、30代の社員が
メンテナンスでミスをし、
お客様にご迷惑をかけてしまいました。

その報告を受けた50代の上司は、
30代の部下に
「お客様サービスには
細心の注意をしなきゃダメだろう!」
と厳しく叱責したそうです。

すると叱責を受けた部下は逆ギレし、
「そこまで言わんでもいいだろう!」
と怒って退席。
それ以来この二人は、
口も利かなくなりました。

講座に出席された幹部の方はふたりに、
チームで動く仕事が多いのだからと
「いい加減に大人になって、
コミュニケーションとって仕事をしなさい」
と注意しましたが、
お互いに意地を張っているのか、
口をきこうともしません。

さあ、あなたがこの幹部の方の立場なら
このふたりをどうしますか?

講座の中でも、
話し合いをしてもらったところ、
いろんな対応策のアイデアが出てきました。
「スッキリするまで言い争いをさせる」
「ふたりで話をさせて、その後飲みに行く」
「幹部がお互いの言い分を聞く」
などです。

しかし、具体的にどう言い分を訊くのか
質問してみると、
皆さんなかなか答えが出せずに
いらっしゃいます。

この場合は、
お互いの感情がもつれていることが
原因ですから、
感情をもとに戻すことが先決になります。

50代の上司は、
30代の部下の対応や姿に
自分の焦点が行っています。

ですから、まずは自分自身に
焦点を向けさせることです。
そして、自分を理解させること。

まずは、相手に対しどんな感情を
持っているのか訊き出し、
その感情を自覚させましょう。

人がネガティブな感情を持っている時は、
その感情を自覚できると
だんだん収まってきて、
感情優位から思考優位状態になります。

この状態になってから、
改めて本人に期待されている役割を認識させ、
感謝できることを探してもらい、
今の状態が良くないことを
自覚してもらいます。

ここまでできると本人も、
いつまでも意地を張っていることに
価値があるとは、
感じられなくなることがほとんどです。

私が、悩みを打ち明けられた幹部の方に、
「双方の状態をこうして整えた上で、
ふたりを話し合いの席につけては?」
と提案しましたら、
「そうですね。
冷静になればきちんと話ができると思うので、やってみます」
とのことでした。

この場合の問題点は、
感情のもつれたふたりに幹部が
「いい加減に大人になって、
コミュニケーションとって仕事をしなさい」
と注意していたことにもあります。

これで双方が反省し、相互理解を深め、
歩み寄る場合はいいのですが、
今回のように感情がもつれたままの場合は
なかなか解決しません。

幹部が、
それぞれの感情を引き出して自覚させ、
そこを理解してあげることです。

まずここで、幹部と50代の上司、
そして幹部と30代の部下の
信頼関係がつくられます。

信頼関係があるところでは、
冷静になれますから、
双方を理解している上司立会いのもと
話し合いをさせると、
お互い感情的にならずに、話が進められます。

このプロセスを受講生の方々にお話しすると、
「いやあ、私には難しいですね」
と言われる方が複数いらっしゃいました。

これは、まだ一度もそのプロセスに
チャレンジしていないから
「難しい」と思っているのです。

何事もできるようになるには、
トライするしかありません。

これを人任せにしてしまうと、
信頼されないリーダーだと
見られてしまいます。

あなたも、もめごとの間に
入らなければいけなくなった際には、
チャレンジしてみられることを
お勧めします。

もめごとは、チームの信頼関係を
強固なものにするチャンスです。

主体的に当事者たちに関わることは、
リーダーの存在感を示す
良い機会にもなりますね。

あなたは仲たがいしている部下同士を、
どうやって仲直りさせていますか?

 
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