会社で人事、総務を担当しているAさん。
部署の中ではナンバー2の立場です。
Aさんは、上長の態度に
少し困っているようでした。

話を聞くと、その上長は、
・もともと人と話をしないタイプ
・指示命令は、顔が見えてもメールでする
・忙しくなると、
部下が動かないからと愚痴を言う
・挨拶をしても目を見てくれない
というような感じの方。

最近、退職(転職)が決まった部下に対し、
その上長は、ちょっとした恨み節を
メールで送ったようで、
その話を部下から聞かされたAさんは、
どうしたものかと悩んでいました。

Aさんは過去には、
自分から相談したり、話しかけたり、
上司の仕事を受け入れられる状況を
自ら作ったりして、
何とか変わってもらおうと
働きかけていたこともあったそうです。

けれども、一向に変化が見られないため、
Aさんは半ばあきらめていました。

そして私に、
「この人がいるから、
自分のやりたい仕事が制限されるし、
部署の雰囲気も良くならない」
とまで、口にされました。

「どうなったらいいですか?」
と質問すると、
「この人が異動すればいいかもしれません」
との答え。

でも、上司の人事異動は
Aさんの専権事項ではありません。

似たような状況は、
あなたの職場にもあるかもしれませんね。

私も過去のサラリーマン時代、
似たような環境になり、
Aさんと同じように
考えていた時期もありました。

人は他人を見たとき、
その人のある一面を見て判断しがちです。

特に上司が取る行動については、すべてを
「上司だから」という前提で見がちなもの。

「上司だから、
部下とコミュニケーションをとるのは当然」
「上司だから、部下よりできて当たり前」
「上司だから、
人として尊敬されるのは当たり前」

確かに、そうであってほしいのですが、
上司も人間で、地位や職位は、
サラリーマンの場合は自らが選択して、
手に入れたものではありません。

好きで上司をやっているのではないという、
上司もたくさんいらっしゃいます。

そのような視点で、Aさんの上司を見ると、
かわいそうだなと思えてきました。

きっと、人と接することについて
何がしかのコンプレックスや
ネガティブな思い込みを
抱いていらっしゃるのでしょう。

Aさんと対話を続けます。

私「Aさんが欲しい状態は何ですか?」

Aさん「部署内の風通しが良くなって、
部下が仕事がやりやすくなることです」

私「その為に必要なことは何ですか?」

Aさん「上司が変わることです」

私「上司の方が変われるように、
Aさんができることは何かありますか?」

Aさん「いろいろしてはみたのですが……

私「上司の方はどうなったら、
部下に仕事を任せてくれたり、
話しかけたりするようになると思いますか?」

Aさん「部下に任せたいと思ったり、
話しかけるメリットがあると思ってくれれば
できると思います」

私「上司の方に何があれば、
任せてくれるようになりますか?」

Aさん「部下への信頼ですかね」

ここで私から、
人が人を信頼できるようになるポイントを
いくつかお伝えしました。

それを受けて、Aさんが出した答えは、
Aさん自身が上司からの信頼を
勝ち取るというものでした。

ここからは、変わるべきは
上司ではなくAさん本人になります。

そこでAさんに、
変わることにチャレンジすることによって、
得られるものをイメージしてもらいました。

「上司との風通しの良い関係」
「部下の不満がなくなる状況」
「自分の言いたいことが言えている状況」
「上司に理解をしてもらっている自分」

Aさんは、自分の仕事が
どんどん楽しいものになってくることが、
イメージすることができました。

対話が終わった後、
Aさんは私にこう言いました。

「この人(上司)がいるから、
自分のやりたいことは制限されていると
思っていました。
でも上司を制限する人ではなく、
チャレンジさせてくれる人と思えたら
楽になりました。
味方につければ、壁ではなく、
後押ししてくれる存在になることがわかり、
楽しくなってきました」

朝、会ったときの表情とは
明らかに変わっています。
あとは行動あるのみ。

人は、思い込みで色々な価値判断をします。

その価値判断を変えるには、
それまでの思い込みを外して、
新たな思い込みをつくればいいのです。

人の本質的な部分が理解できていると、
やりやすくなりますね。

こんな気難しい上司を自分の味方にできたら、
あなたならどうなると思いますか?

 
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