今日は人財育成において、
「心理的安全性の確保は万能ではない」
ということをお伝えします。
世界的企業であるGoogleが、
全社的に導入して話題になっている
「心理的安全性」。
コーチングや人財育成でもよく用います。
人は、恐れや不安を感じると、
本能的に動けなくなります。
この状態だと、生産性を上げるには
鞭を打つ以外にありません。
しかし鞭を打つ方法では、
短期的な成果は望めても、
その後疲弊したり信頼関係が崩れたりして、
逆に、長期的な発展を妨げる要因を、
作ってしまうことにもなりかねません。
恐れや不安を感じなくて済むように、
あるいは打ち消してくれるように、
心が落ち着ける環境を整えたり、
メンター制度を導入したり、
1on1のコーチングを行ったりして
心理的安全性を確保することは、
人が動き出しやすい状態を作りだし、
新たな気付きやモチベーションも生まれて、
生産性を向上させます。
私自身も、
企業のコンサルティングや研修の際には、
まず「心理的安全性」を確保するよう、
受講生や、その場に働きかけています。
でも、これだけでは、
生産性は上がりません。
先日、こんな相談を受けました。
相談者は営業のリーダー職のBさん。
部下が数名いるチームを、
引っ張る立場の方です。
BさんもGoogleに倣えとばかり、
メンバーに対し、
何でもあけすけにモノを言える雰囲気を、
作ってこられました。
おかげでメンバーは、
悪い報告もすぐしてくれるようになり、
チームの問題も、
表面化する前に手が打てるようになって、
Bさんもメンバーも、
風通しの良いチームだと感じていました。
ところが最近、そのうちの2名が
退職を申し出てきたのです。
そこで、私が相談を受けたという経緯です。
Bさんに退職理由を聞いてみると、
一人は以前からやりたいことがあったから。
もう一人は何ともはっきりしません。
ここまで聞くと、もう原因は明らかです。
部下の焦点が、
自社の目標やビジョンに向いていないのです。
心理的安全性が確保されると、
人は安心します。
安心は、
新たな挑戦心や好奇心を生み出しますが、
チームの大切にしたい理念やビジョンが
共有されていなければ、
他のところに自分の好奇心が
向いてしまうのです。
部下の2人は、
安心して仕事ができるようにはなりましたが、
新たな発見や好奇心を、
社内の目標に見いだせなかったのでしょう。
これは、
ビジョンや目標が共有できていない組織に
よく見られる現象です。
「共有」というのは、
「理解している」程度ではいけません。
組織の価値観であり、
個人の価値観でもある状態です。
価値観は文字通り、
「価値を感じるポイント」。
価値を感じるポイントに触れれば、
当然のことながら、感情が動きます。
ですから目標に向かう行動とは、
例えば、その人の心が躍るくらいの
状況になるということです。
ですので、処方箋は簡単です。
本人の価値観や目指したいことと、
組織の価値観や目指すべきことの、
合致ポイントを探してあげることです。
これにはコーチングの技術が、
最も効果的です。
みらい創世舎でコーチングを学んだ、Bさん。
今からでもできることを理解すると、
笑顔になり、
「やってみます」と言ってくれました。
今後のBさんの成長が楽しみです。