家族が我を失ってしまったら
どう対処しますか?
先日、私にご相談いただいたIさん。
最近、コーチングを学んでおられる方です。
離れて暮らすご両親がおられるのですが、
最近、お父さんの調子が思わしくなく、
お母さんがその看病で疲れているのを
Iさんはとても心配しています。
Iさんは学んだ技術を使って、
お母さんのお話を傾聴してあげています。
しかしお母さんが、
「お父さんの看病をするのは私しかいないから」と言って、
精神的にも肉体的にも
ずっと無理している様子なので、
心配でならないということでした。
「何とか、無理しているのを
少しでも楽にしてあげたいのですが、
現状ではどうしようもありません」
というIさんに私は、
「お母さんの事を理解してあげてください」
と伝えました。
するとIさんは、
「いや、理解していますよ。ちゃんと話も聞いてあげていますし」
と言います。
私がさらに、
「お母さんの今の気持ちを理解して、楽にさせてあげるとIさんの気持ちはどうなりますか?」
と質問すると、
「私は安心できます。でもどうやって?」
とのことでした。
Iさんのお母さんは、
目の前のお父さんのご病気で頭が一杯になり、
「私が何とかしてあげないと」と、
追い詰められた気持ちになっておられます。
そこしか見えていないから、
無理をしていらっしゃるのです。
お母さんにとってのお父さんは、
今の目の前のお父さんのほかにも、
元気なころのお父さん、
Iさんが小さい頃のお父さん、
Iさんが生まれる前のお父さん、
そして結婚される前のお父さんと、
いろんなお父さんがいるのです。
私は、
「それぞれの時期にどんなお父さんであったのか、じっくり訊き出してください」
とIさんに伝えました。
今のお母さんの眼には、
今のお父さんの姿がすべてだと
映っていることでしょう。
そして、看病で疲れているお母さんを見て、
Iさんも、今のお母さんの姿がすべてだと
思い込んでいたのです。
「過去のお父さんのことをお母さんにイメージしてもらうことで、過去があって、今がある。そしてこの先のお父さんもある。といった視点をお母さんに持たせましょう。
そうすると、お母さんも少しは落ち着かれるでしょう」
と私はIさんに提案しました。
視点を長く持つことで、
今の病気の状態も
長い人生の1シーンなのだと
捉えることができます。
視点を変え、俯瞰して
相手のことが見えるようになるのです。
この状態を作ってあげられるのも、
コーチングの素晴らしいところ。
その状態をIさんが作ってあげれば、
お互いにイメージを共有しているので、
お母さんもホッとしてくれることでしょう。
その上で、これからどうしていくのかを、
母子で話しあってみたらどうでしょうか?
私はこのようにIさんに提案しました。
するとIさんは、吹っ切れたような表情で、
「やってみます!」と言ってくれました。
次回お会いするときの報告が楽しみです。
人は、
目の前の大切な人が病気になったりすると、
我を失いがちです。
そんなとき、視点を変えることができたり、
俯瞰して出来事が見られるようにするだけで、
心を落ち着かせてあげることができます。
こうして家族の役に立つことができたら、
自分自身の救いにもなりますね。