毎日さまざまな方と対話を通して接していると、
「私は全然できません」という風に
話される方によく遭遇します。
本人は特に意識していないのですが、
しっかり観察すると、
頻繁に口にされたりしています。
一見すると、謙虚なようにも見えますが、
実際は単なる自己否定の場合が多いです。
そもそも「謙虚さ」とは、
素直に相手や出来事を
受け入れようとするさまであり、
相手や出来事から、
何か学ぼうとする時に出てくる姿勢です。
自らのできないところが分かっているから、
あるいは、できないところを理解しようと思うから、
素直に相手や出来事から学ぼうとします。
謙虚さとは、こうした自己理解に基づいて、
さらに成長したいと考える人たちに、
よく見られる傾向なのです。
パナソニック創業者の
松下幸之助さんなどは良い例でしょう。
貧乏な家で、学歴もなく、
身体も弱かった松下さんは、
自分の身の回りに起こるさまざまな困難を
素直に受け止め、
そこから何かを必ず学んで、
自分で立ち上げた会社を
一大企業に育て上げました。
謙虚な人は、
何事も素直に受け止めようとするので、
成功される方が多いですね。
一方で、「私は全然できません」を、
自己否定として使ってしまう人の場合、
「自分はできない」と言うことで自分自身を否定し、
そのことによって、
自分自身がこれ以上動かなくてすむように、
無意識に方向付けをしてしまっています。
本人は無自覚な場合が多いので、
気がついたら周囲の人は
フィードバックしていただきたいですね。
先日、セッションをしたAさんも、
そんな一人でした。
感性も豊かで、能力も高いのですが、
「私は全然できないので……」
と、つい言ってしまいます。
言葉をひとつひとつ、分析していくことで、
ご自身の単なる思い込みであることに、
気がつかれました。
でも「自分はできない」と思い込むには
必ず理由があります。
Aさんも、
過去にいじめにあった経験がありました。
私との対話の中で、
Aさんは思い込みを変えるために、
過去の経験を「つらく大変だったこと」から、
別の意味付けに変えました。
これからは、
「私はできない」と自分を隠すのではなく、
自分の方から主体的に自己開示していこうと、
Aさんは自分自身に約束してくれました。
その後のAさんは、
吹っ切れたように明るくなって、
人のことを素直に受け止められるようになり、
仕事の悩みも、自らが成長できる機会と
捉えられるようになりました。
文字通り「謙虚」になられたんですね。
次にAさんとお会いできる日が
私も楽しみでなりません。