■今日の質問「メンバーの行動を、承認していますか?」
森泰造 さん、こんにちは。
悩めるリーダーにブレイクスルーを引き起こす人財育成コーチの森泰造です。
先日、8歳の娘が珍しく仕事部屋に入ってきて、
学校で習字の時間に書いた「菜」 という字の作品を私に見せてくれました。
「お父さん、見て、見て~! 初めて書いたのこの字」
仕事をしている私の部屋には、あまり入ってこないのですが、よっぽど見せたかったんでしょうね。
私が「初めてなのに良く書けたね。自然な菜の花のイメージが湧いてきそうだよ」とフィードバックしてあげると、嬉しそうに自分の部屋に戻っていきました。
娘が、私に自分の書いた習字を見せに来た時、欲しがっていたものはなんでしょうか?
人(親)によって、対応は様々でしょう。
飛びきり喜ぶ方や、褒め言葉を連発する方、静かに見守ってあげる方、頑張ったねと言ってあげる方……。
今日は、そんな「人が欲しがるもの=欲求」について心理学者のマズローが提唱している欲求段階説から、紐解いていきましょう(図参照)。
マズローは人間の欲求を5段階に分け、ある段階の欲求が満たされると次の段階の欲求を求めると説いています。
人は欲求の生き物です。
欲求があるからこそ、行動が生まれます。
その欲求の中で、最も本能的な、生きていくために必要な欲求が最下層の「生理的欲求」です。
食欲、性欲、睡眠欲です。
これがある程度満たされる状態になると、安全でいたい、安心していたいという「安全の欲求」が生まれてきます。
職場で言うと、仕事がある、給与が正しく支給される、ユニホームが揃えられている、休日がある、などがこれにあたるでしょう。
安全安心の場があることが確実になると、次に、その場に所属していたい、その場の人達とつながっていたいという「所属と愛の欲求」が出てきます。
そして、その場に所属できることが確実になると、今度は自分が所属している場で行動していることが認められたいという「承認の欲求」が芽生えます。
本人としては頑張ってやっているのに、誰からも認められない職場。
この状況はよく発生します。
なぜならば、他人のやっていることに興味を持たない風潮があったり、そもそものコミュニケーションがうまく取れていない職場だったりすると、「承認する」と言う行動の前に必ずやっている「観察」が行われていないからです。
人のしようとしていることが誰かに観察され、その場で行動していることが確実に認められるような状況になると、さらに成長したいとか、もっと貢献したい、もっと自分の価値をその場で高めたいという「自己実現の欲求」が生まれてきます。
ですから職場で人を育てるときには、この欲求段階説に沿ってひとつずつ階段を登らせ、自己実現の欲求を引き出す組織作りが不可欠です。
「森さん、うちはちゃんと人のやってることは褒めるようにしているのに、なんかメンバーのモチベーションが上がってこないんですよね。」
こういう話は、私がコンサルティングに入っている現場でも、本当によく耳にします。
これは「承認の欲求」を満たすことで「自己実現の欲求」を引き出そうとしている行為なのですが、残念ながら多くの場合、その前段階である「安全の欲求」「所属と愛の欲求」の環境整備がなされていない場合が多いですね。
欲求の段階は、人間が文化的な生活を進化させていく過程で生まれたものです。
いきなり、「自己実現」を要求してもできるわけがありません。
まずは、その環境が安全・安心できる場であること。
その人がその場から外されるような心配をしないでいい、所属していることが実感できる場であること。
その上で、人の行動が認められる環境を作りましょう。
これは、決してほめること一辺倒ではありません。
過度に褒めることは逆効果です。
(これについては、また後日触れたいと思います)
感じたままを素直に言葉にして伝えるだけで十分です。
そうすると、自らの意志で
「もっとこうしたい」
「こんなことにチャレンジしてみたい」という自己実現欲求は自然と発生してきます。
これは、家庭でもおんなじですね。
娘にとって、家を安心できる場所にしてあげること。
そして、家族はつながっているんだよと感じさせるには、一緒に食事をしたり、話を聴いてあげたり、応援してあげたり、相手の事を考えてアドバイスしたりってことを自然と行うことですね。
すると、学校であったことや自分がやっていることの話をするようになります。
それを、「そうなんだね」「頑張ってるんだね」と認めてあげることですね。
これが習慣になっていれば、子どもも自分のやりたいことやチャレンジしたいことを自然と探すようになります。
冒頭の娘が望んでいたもの。
それは「承認」でした。
人間にはこの欲求段階説のように、進化の過程で生まれてきた原理原則があります。
これを理解して、職場改革に活かせば効果てきめんですよ。
あなたは、メンバーの行動を観察して承認することを心掛けていますか?