■今日の質問「リーダーは未来を見ていますか?」
こんにちは。
悩めるリーダーにブレイクスルーを引き起こす人財育成コーチの森泰造です。
私のリーダーシップマスター講座では、受講生の方と個人セッションの時間を持っています。
現場で実際に起こっている問題に直面されている受講生の方々からリアルなお話を聞けるのは、新鮮でとてもありがたい時間です。
今日はその中でお話を伺った、企業の管理職として活躍されているTさんの事例をもとに、部下の主体性を引き出す方法について書きます。
Tさんの部署は、会社の未来を創る使命を仰せつかっている、部下を含め5人のチームです。
Tさんの喫緊の悩みの一つは、「現状の業務をこなしながら会社の未来を創ることを考えるには時間がとてもじゃないが足りない」ということでした。
その原因となっているのが、言われたことでしか動けない年上の部下でした。
Tさんは、その年上の部下は上から言われたら動くが、自ら主体的になって動くことはない。
先を見た行動も取れない。何か良い気づきを得て、彼が主体的になってくれたらと思っています。
Tさんの部署には、現場の要望に応じて対応する日常業務があるのですが、その年上の部下は、現場からの要請に応じた対応方法がわからないと何度も確認をしに来るそうです。
過去に対応した案件と同じようなものでも確認をしに来るので、そのたびごとにメンバーの手が止まり、Tさんはそこへの注意・指導に時間がとられてストレスが溜まっているようでした。
Tさんの話によると、何回注意しても部下が確認し直しに来るので、メモを取るように伝えたそうです。
すると部下は、メモ自体は取るようになりました。
ところが、肝心の度重なる確認のほうは止まらなかったのです。
というのは、今度はそのメモ自体をどこに置いたかわからないようになったとのこと。
こうなると、今度はメモの置き場所を考えたり、なくさないための手段を考えてあげなくてはいけなくなって、余計に手間がかかってしまったりしますね。
あなたなら、このような年上の部下を持たれたときどのように対処しますか?
どうしたらいいのでしょう?
Tさんによれば、チームのメンバーはその人が最年長で先輩格なので、気を遣って対応していたようです。
そのために、言われたことしか動いていないことや、何度も同じことを繰り返していることを、その都度フィードバックすることも無かったようなのでした。
Tさんの本当の望みは、その年上の部下の方に自分のエネルギーを取られるのではなく、部署として会社の未来を考えるという、本来の自分の仕事に集中したいということです。
それにはまず、Tさん自身が年上の部下の行為に引きずられてペースを乱している現状を認識し、主体的に関わることが大切です。
その為にも、「そもそも自分は何の仕事を主とするのか?」を考え、それを推進するために必要なマイルストーン(中間目標)を設定し、そこに至るまでのスケジュールを考えることを提案しました。
未来を創る計画を実行するイメージをすることで、行動の優先順位が決まります。
Tさん自身が、未来を考える仕事を優先させる姿勢を鮮明にチーム内で共有すると、チーム内にビジョンが共有されるようになります。
すると他の優秀なメンバーは、それを理解したうえで仕事を勧めようとしますから、チームの雰囲気にも変化が起こります。
まずは「空気を変える」と言うことですね。
そして、Tさんには、年上の部下に対しては「メモを取るアドバイス」ではなく、具体的にフィードバックを与えることをお勧めしました。
Tさんは、この部下が頻繁に確認に来ることを「何回も何回も」と嘆いていましたが、実際には正確な回数のカウントもされていませんでした。
このような部下の場合は、自分が目の前の作業を行うことで時間を費やすことだけで仕事をしている気になっていることがよくあります。でも他人から何も言われない間は、本人はこれでいいんだとしか思いません。
確認しに来た作業については「〇〇さん、〇回目ですね」というフィードバックを淡々と繰り返すことです。
チーム内の雰囲気が変わり、その雰囲気にそぐわない行動をとる人に対しては、事実を忠実にフィードバックすることで、その本人も自分が正しいと思っていたこと(目の前の作業だけに時間を費やしている)に疑念を抱くようになります。
このようにして本人の気持ちが変わったときこそ、主体性を持たせるチャンスとなるでしょう。
Tさん自身は、まじめで優秀な方です。優秀な方だからこそ、会社から未来を考える仕事も託されています。けれど、人は目の前の事象の方がよりリアルに感じられるので、そちらにどうしてもエネルギーを取られがちになってしまいます。
意識して未来を具体的に描くことは、そんな自分自身の視点を変えてくれます。
あなたのチームのリーダーは、未来を見ていますか?