■今日の質問「目の前のことしか見えていないことはないですか?」
こんにちは。悩めるリーダーにブレイクスルーを引き起こす、人財育成コーチの森泰造です。
読者の中には、この春から進学や昇格昇進、またはそれに伴う引っ越しなどで「変化」を迎えられた方がたくさんおられることでしょう。
そして、この時期の変化は「嫌な感じ」の変化ではなく、「期待する」変化のほうが多いですよね(一部、そうでない方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまで一般論です)。
変化が伴うと、ワクワクしたり不安になったり。
これってどうしてだと思いますか?
本来、人は自分で自分を守ろうとする本能がありますので、基本的に今の状況から変化をすることを避けようとしてしまいます。
その理由は
「今が楽だから変わりたくない」。
先日、とある機会に中小企業を営む経営者の奥様とお話をする機会がありました。
その中小企業は、経営者の方がワンマンということもあってか、従業員間のコミュニケーションがうまくいっておらず、奥様が不安や不満を抱える従業員の聞き役になることでバランスを取っていました。
その聞き役をしていた奥様に、大変な役割ですけどやりがいもありますよね、と私が聴きました。
すると、「やりがいなんてないですよ。もうしんどくて、やりたくないんです。」との答え。
私はちょっと驚きました。
頭も好くて、人のことを考えてあげられる人間的にも優しい気持ちを持っていらっしゃる方だと思っていたからです。
よくよく話を聴いてみると、最初のうちは困っている人を助けてあげよう、少しでも話を聴いてあげることで自分らしさを取り戻してくれたらいいなと思って聞き役をしていたそうです。
でも、単なる聞き役ではなくて、相談役もやっていたんですね。
話を聴いた上で、自分なりに考えてアドバイスをしていたそうです。
ただそのアドバイスも、夫である経営者の方の方針やこだわりに触れないようにすることを前提に、改善策を考え、アドバイスをされていました。
大変な労力をかけられていたんだなと話を聴いていると伝わってきます。
けれども、どうして最初は良かれと思ってやっていたことが、今は負担に思うようになってきたのでしょうか?
その答えは「未来が見えなくなったから」でした。
相談に乗り始めた当初は、従業員の方が笑顔を取り戻して働く姿をイメージしてできていたんです。
でも、そのうち経営者の方のこだわりに触れないようにどうするか? を考えることに一所懸命になりすぎて、従業員の方の笑顔で働く未来の姿がイメージできなくなっていたんですね。
それともう一つ。
奥様がアドバイスを一所懸命に考えてあげていたことで、失っていたものがありました。
それは、従業員が自分自身で考える機会。
奥様がアドバイスをしてくれるものですから、従業員は相談さえすれば解決策をもらえることを覚え、いつの間にか、奥様に依存するようになっていたのです。
この2点、文章にすれば「なんだそんなことか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、よくあることです。
特に、まじめな人ほどこの現象に陥っていることに気が付きません。
こんな時の処方箋は、「そもそも何のためにやっているのか?」を考えること。
そもそも従業員が楽しく働く関係性が職場でできるようにと思って始めた、従業員相談なのです。
結果にフォーカスすれば、楽しく働くための職場と思えるようにすることが得たい結果。
その為には、その職場の主人公は従業員なのですから、何ができるか? どうすればいいのか? を「考えてあげる」ではなく、「考えさせる」ことが大事です。
私が「考えてあげる」から依存されるのだということを指摘すると、奥様は最初は「そうは言ってもほっとけないし……」と言われていましたが、自分の子どもを教育するという視点で改めて考えて頂くと、ハッとされました。
子どもを自分で考えて行動できるよう育てるには、「どう思う?」「どんな感じ?」などと声をかけて、子ども自身が体験していることをいいことか悪いことか判断できるよう、考えさせますよね。
では、どうしたら従業員に奥様はアドバイスせずに済むのでしょうか? 依存状態を作らないようにするには?
それはアドバイスではなく「質問」をすることです。
では、何を質問するのでしょう?
答えは、そもそもの目的を考えるとわかります。
この場合は、そもそも従業員が楽しく働く関係性が職場でできるようにと思って始めたことですから、以下のような問いかけがあるでしょう。
「あなたが楽しく働く関係性が職場でできるようになるには、何があればいいと思う?」
「そもそもどうなったらいいの?」
「そのためには、あなたが出来ることって何があると思う?」
得たい未来を想像させると、相手の焦点はそちらに向かいます。
すると、今の出来事は嫌な現実から、楽しい未来へのプロセスに変わるのです。
このやり取りの中で、奥様が一所懸命改善策を考える必要はありません。
答えは相手が持っているのですから。
といったお話をしていると、奥様の表情はみるみる笑顔に変わっていきました。
人って、今目の前に起きていることを何とかしたいと思って、行動します。
そもそも、その行動は今を変えて新しい未来にするためにとっているのですが、目の前のことに集中しすぎると、目の前のことを変えることがすべてに思えるようになってきて、だんだん重たく感じてしまうのです。
常に未来を考えて行動する習慣をつけると、このように一所懸命やっているのに疲れることは極端に減ります。
今、しんどいなぁと思ったり、問題に悩んでいたりするあなた、そもそもどうなったらいいのか? を忘れていませんか?
「そもそもこうなったらいい」は、イメージできないと効力を発揮しません。
イメージできない時は、私に個別にご相談ください。
必ずお力になれると思います。
あなたは、今目の前にあることしか見えていないことはないですか?