こんにちは。
悩めるリーダーにブレイクスルーを引き起こすリーダー養成コーチの森泰造です。
前回のブログで、店長に昇格したばかりの時のエピソードを書きました。
簡単に言うと、副店長時代にアルバイトを統率することで自信を深めた私は、店長になってその部下であるAくんに同じことを要求します。
しかし、Aくんの行動と私の思いにはズレがあったために信頼関係が崩れ、アルバイトはどんどん辞めていき、店舗運営に汲々とする、いわゆる「いけてない店長」になってしまったという話でした。
このままではいけないという思いで、副店長のAくんと連日、アルバイトに影響力を発揮してほしいといった話をしました。
私の前では「はい、やります!」と言ってくれるのですが、肝心の行動は本人のプライドが邪魔するのか、私の目を気にしすぎるのか、あまり変化も見られず……。
店舗はアルバイトが辞めたため、私もAくんもオペレーション(調理や接客などの作業)に1日従事するような日が続きます。
実は、これが功を奏しました。
アルバイトが充足していたときは、私は一歩引いてできるだけAくん中心にオペレーションを動かすように配慮していました。
ところが、人員不足の状況ですから私もアルバイトと同じオペレーションを一日中やることになります。
数少ないアルバイトと一緒にオペレーションをしているときは、自分の副店長時代と同じモードで、声をかけながら、励ましながら、お客様に「ありがとうございます」と一緒にお辞儀をし、よかったところはその場でフィードバックし、改善すべきところはその場で指摘して改善行動の練習をさせます。
このようにして、Aくんと一緒にオペレーションに入る状況がしばらく続きました。
すると、Aくんが私のやってることを真似するようになってきたのです。
私はAくんに「アルバイトを指導しなさい」と言ってはいたものの、アルバイトに実際にオペレーションで接していた姿、これを実は見せていなかったんですね。
Aくんは「店長のアルバイトを動かす姿が参考になりました」と当時は言っていました。
そうなんです。
Aくんはアルバイトを教える術を頭で理解しながらも、どう行動していいのかわからなかったのです。それにプラスしてAくんのプライドが「手法を学ぶ」邪魔をしていたんですね。
私はそんなAくんの状況を理解せずに、「副店長なんだからやりなさい」と要求だけしていたんです。
太平洋戦争時には連合艦隊司令長官を務め、真珠湾攻撃を指揮した山本五十六は、部下育成の名言として
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
と言っています(これには続きがありますが、そればまた別の機会に触れましょう)。
人を育てるときに、まず必要なことは「やって見せる」ということなんです。
サンプルが無いと、人はどうやって動いていいかわかりません。
Aくんは、以前の店舗でも同じように「やってみせて」もらったことがなかったそうです。
人員不足に陥ったことが功を奏して、私はアルバイトを指導しながら育てることを「やってみせ」る機会を作ることができました。
その後、Aくんは私のやっていたことを真似して、アルバイトの指導を積極的にするようになりました。
すると、すでに店で働いているアルバイトがほかの人を誘ってくれて、人員も充足するようになってきました。
そして、Aくんが他の店舗への異動が決まった日に私にこう言ってくれました。
「店長、私はいままで自分の恰好ばかりを気にしていたと思います。でも、途中で店長の姿を参考にするようになってからは、吹っ切れました。恩返しはこの店舗ではできていませんが、次の店舗へは自信をもっていけます」と。
この経験は、その後の部下育成において、私の中で最も重要視する柱となりました。
今もセミナーや企業研修では、まず「やってみせ」を必ず取り入れるようにしています。
そしてこれが私の研修が「わかりやすい」と評価をいただいている大きな要因の一つだと確信しています。
あなたは、部下に求めていることをやって見せていますか?