こんにちは。悩めるリーダーにブレイクスルーを引き起こす、リーダー養成コーチ・森泰造です。
書籍の出版が決まって、出版社から取材を受けています。その中でお話ししていると、昔の自分がどんな仕事をしていたのか、如実に蘇ってきます。
先日「森さんは、店長のときに店舗を地域一番店にするという目的があったから、ブレずに部下やアルバイトさんとコミュニケーションが取れていたとおっしゃいますが、最初からできていたんですか?」と聞かれました。
その質問をされて、改めて店長になりたての頃を思い出しました。
私は、入社して5年たって店長になりました。
それまではハワイの店舗で異文化の従業員と一緒に仕事をしたり、新店舗のオープニングの副店長としてアルバイト教育を率先垂範でやってきていたので、店長になったときも絶対に地域一番店を作ってやると自信満々でした。
その自信満々で臨んだ初めての店長としての店舗。
実は、最初は思うように運営できていませんでした。
店長になると部下に副店長がつきます。Aくんとしましょう。
自分が率先垂範してアルバイトを引っ張っていた副店長時代、私は店長がそんな環境を作っていてくれたと感じていました。そこで、私も副店長にアルバイトを率先して育成の面で引っ張らせないといけないと考え、副店長Aくんに「教育は一任する」と伝え、一歩引いて店舗全体を俯瞰してみる立場をとるよう心掛けたのです。
ところが、自分の副店長時代の実務行動、教育姿勢とAくんを比較してみると、どうにも物足りません。
「なんでもっと覇気を出さないんだ」
「どうしてアルバイトにもっと考えさせられないだ」
「自分はできていたのに、なんであなた(副店長Aくん)はできないんだ」
こんな言葉が私の口から洩れるようになります。
それでも副店長のAくんに役割を全うしてもらわないと、と思いAくんに期待をかけます。
でも、私の口から出てくるのはAくんへの叱責ばかり。
そのうち、そのイライラがアルバイトさんにも波及してしまい、アルバイトさんの退職が目立つようになってきました。
そして、ふと気が付くと私は副店長のAくんとの信頼関係が崩れてしまって、辞めていったアルバイトの補充も思うようにいかず、人員不足に陥り、全体を俯瞰して動かすような店長業務というより、毎日運営していくことだけに必死な「いけていない店長」になってしまっていたのです。
今、思うとアルバイトの統率さえとっていれば良かった副店長の時代から、副店長を使いながらアルバイトの統率を取るという店長と役割が変わったのに、副店長Aくんのことを理解していなかったことと、コミュニケーションの取り方をそもそも間違えていたのが間違いだったとわかります。
でも、この頃は全く気が付いてなかったですね。
「なんでAくんは、できないんだ」
が口癖でした。
こんな店長にはついていきたくないですよね。
今考えると、ぞっとします。申し訳なかったなとも思います。
私がよくなかったポイントは、Aくんの行動を自分と比較してフィードバックしていたこと、そして湧いてきた「なんでできないんだ」という感情のコントロールができていなかったことです。
人の成長は人と比較するものではありません。
成長は過去の自分と今の自分を比較するものです。
そんな基本的なことが若かりし頃の店長なりたての私は、わかっていなかったんですね。
店長の役割は、Aくんが主体的に関わっていける環境を作ることなのに、それを怠っていたんですね。
現在、私のセミナーの受講生の中には、「部下がなかなか思うように動いてくれない」との悩みを持って参加される方が少なくありません。
私も同じような道をたどって、試行錯誤を繰り返し、「部下を活かす」手法を編み出しました。
部下を使う立場の管理職の方は、多かれ少なかれ通ってくる道だと思います。
そして、まじめに取り組もうとされている方ほど、このような壁にぶつかるのです。
今は、少しでも早く多くの方が効率よく部下を活かしてチームの生産性を向上させられるよう、自分の経験と経験からあみだした知恵とその知恵を体系化したリーダーシップメソッドを知っていただけたらなと思い、講座を運営しています。
そこでは、成功体験をお話ししていますが、成功の裏にはこんな失敗があったということですね。
あなたは部下の力を引き出せていますか?